09.紅型の色
『あがさ節』
<歌意>
深い山奥に棲む蜘蛛でさえも綛糸を繰り出しせっせと美しい文様を織りなしています。
女の身である私が油断などできましょうか。
《山奥に棲む小さな蜘蛛でさえ、せっせと働いているのですから、女である私も怠ることなく努めなければなりません、という教訓歌の「あがさ節」は織物を成す女性の仕事の貴さを歌った曲です。紅型は機織りではなく染めの工芸ですが、ここでは美しい立派な着物を作り上げていく思いに関連して「あがさ節」を選曲しています。
機織りは身分を問わず女性にとって重要かつ日常の仕事で大切にされてきました。数ある地道な工程を細やかな作業で丁寧にこなし、立派な織物を仕立て上げていく女性の姿が想像でき勤勉さと真心が伝わってきます。
紅型や織物は伝統の中にも、その時代に生きた職人の技と心、そして感性が凝縮されています。年数が経過した作品でも色彩感やデザイン性など、その斬新さは色褪せることなく現在でも普遍的な美しさを放っています。伝統をしっかりと継承しながらも、現代に合った新しさと確かな技を追求し次世代へ受け渡していく。ひたむきに真摯に向き合う勤勉さと、飽くなき挑戦が人にとって何よりも大切なことではないでしょうか。
琉球古典音楽演奏家 親川 遥
城間紅型
紅型の「びん(紅)」は「色」を指し、「かた(型)」は「模様」を意味します。琉球王朝の保護下、次第に技術も高められ、王族や高官、貴婦人等の高貴な人々の衣裳、王からの下賜品、冊封使を招宴する宮廷舞踊衣裳などとして、華麗な美を誇りました。
紅型は琉球王朝の保護下で、王朝お抱えの絵師が図案を描き、彫り師が型紙を彫り、それを紅型三宗家と言われる「城間家」「知念家」「沢岻家」を中心とした紺屋が染める形態で首里を中心に生産されていました。
城間紅型さんは現代にも続く、最も古い歴史を持つ、びんがた工房の一つです。現当主16代目城間栄市さんです。