20.織物の色
『七尺節(シチシャクブシ)』
二葉から出でて 幾年が経たら
巌抱き松の もたへ清らさ
<歌意>
枠の糸を綛に繰り返し掛けているうちにあなたの面影が立ち勝ってきます
綛を掛けて思いを紛らわそうとしますが、
あなたへの思いが増すばかりで何の慰めにもなりません
《七尺節》は古典女踊「かせかけ」で使用され、《干瀬節》に続いて歌われます。「かせかけ」は、「愛しい方に蜻蛉の羽のような繊細で上質な着物を織ってあげたい」と着物づくりを通して愛する男性への思いを表現した舞踊となっております。「枠」と「綛」と呼ばれる小道具を手に持ち踊られ、糸を何度も巻きつける所作からは女性の募る思いが伝わってきます。
また、≪七尺節≫も同様に同じ旋律が何度も繰り返されます。一つの着物を仕立て上げるまでには柄の考案から糸作り、染め、機織りと単調な様々な工程が繰り返し行われます。この「繰り返す」というところに大きな意味合いがあり、舞踊の所作と音楽、そして実際の着物づくりの工程をうまく重ね合わされているように感じます。
高貴な士族のために織られた「首里織」は緻密で格調高い技術が追求され継承されてきました。秀美で上品な色彩と繊細な紋様、また織物から絣まで多種多彩な織の種類があるのも特徴の一つです。「伝統を継承しつつ、自らの個性も織り込む」日々、正面から首里織と向き合い、さらに良い作品を作り上げたいという職人たち揺るぎない熱い思いは、これからも続いていくことでしょう。
琉球古典音楽演奏家 親川 遥
那覇伝統織物事業協同組合
琉球王朝時代、首里は政治経済文化の中心地でありました。
その首里の地で王族、士族が着用した織物技法を継承するため、昭和51年那覇伝統織物事業協同組合が設立されました。
昭和58年「首里織」として国の伝統的工芸品の指定を受けました。