28.学びの色

本散山節(ムトゥサンヤマブシ)
蛍火の影に 墨習てだいんす
油断さぬ者ど 沙汰や残る

<歌意>
暗がりの中、蛍の光を借りてでも学問をしようとする。その絶え間なく努力し続ける姿こそが世間からも高い評価を受け、名声を残すものである。

この曲で使用されている琉歌は、名護親方こと程順則によって詠まれた「琉球いろは歌」の一つです。

程順則は1663年に久米村で生まれ、1728年名護間切の総地頭となりました。生涯で5回中国に渡り学問を深め、人として身につけるべき6つの教えを説いた「六諭衍義」や琉球と中国福州間の航海に関する指南書「指南広義」を琉球に広めました。また、1718年沖縄初の教育機関である「明倫堂」を創設しました。

「琉球いろは歌」は「六諭衍義」の教えを程順則が琉歌に訳し、「いろは順」に集約したもので、現代にも通じる人としての在り方が説かれています。 能楽師である世阿弥は「一芸は万芸に通ず」という言葉を残しており、「ひとつの道を極めることは単にその道だけでなくあらゆる物事に対応する力になる」と説いています。努力や継続はもとより、どのような状況下においても創意工夫を凝らし取り組んでいくことは、勉学や芸事であれ大切なことであり相通じるものがあります。たとえ努力したことが直接の成果に繋がることがなくとも、その取り組む姿勢や過程が大切であり、人としての成長の糧になるということに改めて気づかされます。

琉球古典音楽演奏家 親川 遥

幸喜 洋人

故郷首里で筆をとったのは6歳の頃、以来35年に渡り研鑽を重ねてきました
先人たちの書を模写する”臨書”を通して
先人から学び、新たな表現を探します