21.金細工の色

「天川節」
天川の池に 遊ぶ鴛鴦の
思い羽の契り 他所や知らぬ

<歌意>
天川の池で仲睦まじく遊んでいる鴛鴦の「思い羽」のように
私たち二人の思いの契り(深い愛)は誰も知りません

〈天川節〉について、琉歌全集には「牽牛織女のように、地上の恋人たちも深く愛し合いたいという歌。」とあります。相思相愛の男女の様子が描かれた曲で、その曲に振りつけられた踊りが古典舞踊「天川」です。愛し合う男女を仲睦まじい鴛鴦の姿に重ね、その深い愛情を表現しています。鴛鴦は常に雌雄が一対となって離れずに生活していることから、「鴛鴦(えんおう)の契り」という諺にもなっています。

「天川」をはじめ、琉球古典舞踊の小道具として使用されるのが「房指輪」です。王女や貴族の婚礼指輪として、花嫁の前途を祝し親から子へと贈られました。房指輪は七つのモチーフで彩られています。「魚(食べ物に困らないように)」「ざくろ(子孫繁栄)」「桃(不老長寿)」「扇(末広の福)」「花(生活の彩)」「蝶(天国の使者)」「葉(着る物に困らないように)」と七房それぞれに祈りが込められています。また、ジーファー(かんざし)も沖縄の女性の結い髪を可憐に彩ってきました。

先人たちの技術をありのまま受け継ぐことを大切にしてきた又吉健次郎氏。今も昔も変わることのない金細工の美しさ、そして現代まで受け継がれてきた技と心が又吉氏の作品から感じることができます。

琉球古典音楽演奏家 親川 遥

金細工(くがにぜーく)またよし

琉球王朝時代に開花した、伝統的な装飾品「金細工(くがにぜーく)」
代々、又吉家は王府の抱え職人として、守礼の門の近くで勤めていました。
昔ながらの技と形が生きる「ジーファー、結び指輪、婚礼の房指輪」この三点は今現在も7代目、又吉健二郎さんを中心に継承されています。